朝顔が咲くたびに、あなたを思い出す

朝顔が咲くたびに、あなたを思い出す

夏の朝には、音がある。 エアコンの止まった部屋に流れ込む風の音。遠くを走る始発電車の音。氷がグラスの中で小さく鳴る音。

そして、そのすべてより静かに、アサガオが咲く。

ベランダに咲いた、淡い紫色の記憶

今朝もベランダの手すりに絡んだアサガオが、夜明けと同時に花を開いていた。

淡い紫色の花びらには朝露が残り、まるで誰かが透明な指先で水滴を置いていったようだった。

僕はしばらく、その花を見つめていた。

コーヒーの湯気がゆっくりと空へ消えていく。

君と過ごした、何でもない夏の朝

君と暮らしていた頃、夏の朝はいつも同じだった。

白いシャツの袖を軽くまくりながら、君は眠そうな声で聞く。

「今日は何色が咲いた?」

僕はベランダに出て、花の色を確かめてから答える。

それだけの会話だった。

けれど、不思議なことに、その短いやり取りだけで一日が満たされていた。

一人になっても、花は約束を忘れない

今はもう、この部屋に君はいない。

テーブルには一つだけのグラス。 読みかけの本。 静かすぎる朝。

それでもアサガオは、毎朝同じ時間に咲く。

まるで約束を忘れない人のように。

風に揺れる花を見ていると、失ったものを数える気持ちが少しだけ薄れていく。

夏が教えてくれる、本当の美しさ

恋愛は終わる。 季節も過ぎる。 人はそれぞれの場所へ行く。

けれど、確かに存在していた時間は消えない。

アサガオが咲くたびに、僕は思い出す。

海の匂いがした朝。 君の白いシャツ。 コーヒーの湯気。 そして、何気ない一言が世界を明るくしていたことを。

今日の一輪に、そっと心を重ねる

短い命だからこそ、アサガオは美しい。

朝だけの輝きを精いっぱい見せて、静かにしぼんでいく。

その姿は、若かった頃の恋によく似ている。

もし今朝、あなたの窓辺にもアサガオが咲いていたなら、少しだけ立ち止まってみてほしい。

その一輪の中に、忘れていた誰かとの夏が、そっと眠っているかもしれない。

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投稿日: カテゴリー ブログ

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