偶然出会った、秋の主役
休日の午前中、少しだけ早起きをしていつものフラワーマーケットへ足を運んだ。長持ちするユーカリの枝か、見慣れたバラを買おうと思っていた私の足を止めたのは、色とりどりのダリアが溢れんばかりに入った大きなブリキのバケツだった。ダリアといえば、手のひらよりも大きな大輪で、圧倒的な存在感を放つイメージが強かった。けれど、その日私の視線を釘付けにしたのは、ピンポン玉のように丸く愛らしい「ポンポンダリア」だった。

自然が作り出す、完璧な芸術作品
そっと一本を手に取って間近で見ると、規則正しく折り重なった花びらの美しさにため息が漏れる。まるで熟練の職人が一枚一枚丁寧に折り込んだような、完璧な幾何学模様。鮮やかなワインレッドから中心に向かって深く沈み込むようなグラデーションは、ずっと見ていても飽きることがない。「華麗」や「優雅」といったダリアの代表的な花言葉もうなずけるけれど、このコロコロとした丸いフォルムには、どこか親しみやすくてホッとする温かさがあった。気取らない可愛らしさに惹かれ、気づけば深紅とマスタードイエローの二本を選んでレジへ向かっていた。

一輪の花が変える、いつもの部屋の景色
帰宅してすぐ、お気に入りの背の低いガラスベースに生けてダイニングテーブルの真ん中に置く。それだけで、見慣れたはずの部屋がぐっと秋めいて、空気が少しだけ特別なものに変わった気がした。買ってきたばかりのコーヒー豆を挽きながら、テーブルで静かに咲くダリアに目をやる。たった二輪の花があるだけで、いつもの休日のコーヒータイムが、まるで素敵なカフェで過ごすような贅沢な時間に変わる。スマートフォンを置き、ただ美しい自然の造形を眺めるだけの静かな午後。忙しない日常の中で忘れかけていた心の余白を、このまあるいダリアがそっと埋めてくれたような気がする。
