ふと立ち止まった午後
春の終わり、やわらかな風が街を包み込む午後。
彼女は何気なく歩いていたはずなのに、小さな花屋の前で足を止めていた。ガラス越しに見えたのは、淡い紫のアスター。春の名残を抱きながら、静かに咲くその姿に、心がそっと引き寄せられる。
店主に「その花、お好きですか?」と声をかけられ、彼女は微笑んだ。「ええ、なぜか懐かしくて」その言葉は、自分でも気づかない記憶の扉を開いていた。

あの春の終わりの記憶
まだ少し肌寒さが残る、春の終わりの夕暮れ。
彼と並んで歩いた帰り道、街路樹の足元に小さく咲くアスターを見つけた。彼は足を止めて言った。「派手じゃないけど、ずっと見ていたくなるね。君みたいだ」
その言葉に、彼女は照れながらも何も返せなかった。ただ胸の奥に、静かな温もりだけが残った。あの瞬間の空気や光は、今でもはっきりと思い出せる。

